群青
ultramarine.
携帯電話 02/10/19
以前ネズミだった頃は、誰がネコの首に鈴をつけるかという議論をよくしものたが、現代では自分から鈴を持ち歩いているのだから、楽な時代になったのもである。(寓話的比喩)いまのところ私にとって携帯電話は、目覚まし時計であり無理難題を発生させる装置でしかない。
かつてステディがいたころは、甘い語らいなども与えてくれたが、夢のような時間の後には0が6つも書かれた請求書が来たし(数学的誇張)、恋人に愛想をつかされてからは電話から排出されるのは「命令」「叱責」「罵倒」「ラーメンとチャーハン、大至急ね!」など(社会的制裁)にバージョンダウンした。すべてのIT機器は進化するほどにバージョンダウンする。
畢竟、私は電話で会話する以外の部分に楽しみを求めた。着メロである。ただし自分の着メロではない。
取引先のK林次長(かなりエライ、たぶん)の着メロは結婚行進曲である。ヒゲが濃く、わりと漢気を感じさせる容貌なのだが、なぜにこの選曲をしてしまったのか?想像の域をでないが何らかの希望か、コンプレックスを持っているのだろう。
K林さんの会社に電話をかけ、取り次いでもらう時に「会議中です」とか「商談中です」の返事があった場合、私はすかさずK林さんの携帯にかけなおす。静けさを打ち破る結婚行進曲を想像しながら。(屈折的根暗)